百万年の船

はじめは宇宙人とのファーストコンタクトについて私の理科の知識を総動員して超真面目に空想しています。その後、空想の幅が広がりました。

音楽を聞いて泣けるか?

 父は亡くなる前 85歳くらいから高い音が聞こえなくなり、それ以来音楽を聞くことをやめてしまいました。私もそうなるかもしれないので、今のうちに書き留めておきます。

私は音楽を聞いて涙を流したことが何回かあります。

第1位 モーツァルト作曲 「レクイエム」

 高校生の頃だったと思います。レコードはカール・ベーム指揮 ウィーン フィルの演奏のものです。これを聞いて大泣きしてからモーツァルトにはまりました。しかし、このレコードに針を落とすことは滅多にありません。また泣けるかどうか自信が無いからです。

 40代の最後の頃 海外出張先のフランクフルトで一人で週末を過ごすことになりました。ドイツ人からフランクフルト市内は治安が悪いので一人では出歩かない方が良いと言われていましたので、空港近くのホテルに泊まり、空港から出ている列車でマインツの街に出かけて見物がてら教会に入ったところ、雨が降り出して出られなくなりました。その時 オーケストラと合唱団が入ってきて、その夜行う演奏会のリハーサルが始まりました。本場の生演奏が聴ける良い機会だったので、そのままベンチに座っていました。曲はモーツァルトのレクイエムでした。リハーサルなので止まったり戻ったりします。それを暗い教会に中で私は涙を流しながら聞いていました。後日分かったことですが、この出張の中で私はサラリーマン人生の中で最も重要な仕事をしていました。人生の節目節目でこの曲に出会うのではないか。そんな運命的なものを感じます。

 余談ですが、南沙織の歌に「いつもレクイエムをあの部屋で聞かされたのね」という語句があります。彼女あるいはこの作詞家にとってレクイエムは、「聞く」ものではなく「聞かさせる」ものだったのです。音楽の趣味は強制はできないし、わかってもらえないことはわかってもらえないという教訓です。

(下の写真はネットから採取したマインツの教会とその内部です。)          マインツの旅~ドイツ三大大聖堂とシャガールのステンドグラスに会いに~ | TABIZINE~人生に旅心を~ 

第2位 ベートーベン作曲 第九交響曲

 これはフルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭オーケストラの録音に特定されます。第2次大戦終了後 最初のバイロイト音楽祭の前夜祭(1951年)のライブ録音です。この歴史の凄まじい重みには他のどの演奏も勝てません。聴衆に風邪を引いた人がいてしょっちゅう咳をしているとか、ホルンが肝心なところでトチるとか、最後のところのテンポが速すぎて演奏者がついてこられなくてバラバラになるとか、そんなことはどうでもいい。これは大戦で荒廃したドイツに響き渡る喜びの歌なのです。

 ベルリンのカイザーウイルヘルム教会 戦災でかろうじて全壊を免れた教会 モニュメントになっている

 録音ではありませんが、朝比奈隆指揮 読売日響のコンサートも良かったです。第3楽章で泣いていた人は私だけではありませんでした。

 泣ける音楽はこの2曲くらいです。後は好きな音楽のランキングです。

第3位 ザ・ブルーハーツの楽曲

 ブルーハーツを知ったのは50歳を過ぎてからでした。若い頃を思い出して、精神が不安定になりました。「生まれたからには生きてやる」(ろくでなし)、「俺たち人類は...バカ!!」(皆殺しのメロディ)、「運転手さんこのバスに僕を乗っけてくれないか。行先はどこでもいい。」(青空)精神病の治療の第1歩は、まず自分の精神が病んでいることを自覚することだそうです。その意味でブルーハーツはおすすめです。

第4位 Straycat Blues ローリングストーン

 中学時代の級友にローリングストーンズが好きだというマセガキがいて、レコードを借りて聞いたことがあります。「Beggar's Banquet」(乞食の晩餐)でした。しかし、雑音にしか聞こえません。メロディーらしきメロディーがない。その中でもストレイキャット ブルースは極め付きの雑音です。ところが、その夜に夢というか悪夢を見てその中でミックジャガーがシャウトしていました。それ以来、この雑音が音楽として聞こえるようになりました。

第5位 ベートーベン ピアノソナタ第31番

 ベートーベンのピアノソナタの最後から2番目の曲です。ベートーベンの数ある曲の中で、私はこの曲が一番好きです。第2楽章の「嘆きの歌」が第3楽章のフーガの間に再び出てくるところなど、ピアニストとしての才覚が試されているので演奏しがいのある曲ではないかと思います。

第6位 誰も寝てはならぬ プッチーニ作曲 オペラ トゥーランドットより

 オペラのアリアとしては、おそらくもっとも有名な曲だと思います。フィギュアスケートの曲として使われることが多いので誰でもメロディーを知っていると思います。ところが短くてすぐ終わってしまいます。CDなので(⇐)ボタンを押して何回も聞いていました。気がつくと歌手や演奏が異なる5種類ほどのCDを持っていました。

 この曲が原因でオペラに興味を持ってCDを集め始めましたが、ベルディやドビュッシーを聞いてもあまりぱっとしない。私はオペラが好きなのではなくてプッチーニが好きなのでした。

 

  以下の3曲は音の結晶のような音楽です。音符を一つも動かすことが許されない。堅苦しいと思う人がいるかもしれません。

第7位 モーツァルト作曲 Eine kleine Nachtmusik

 カタカナで書くと長くなるので原語のドイツ語で書きました。直訳すると小夜曲です。まさに音の結晶です。

第8位 バッハ作曲 平均律クラヴィア曲集

 短い曲の集まりですが、一つ一つの曲の内容がすごい。2~3曲聞くともうお腹いっぱいです。リヒテルがピアノで弾いた名盤がお勧めです。ザルツブルグのクレスハイム宮殿にピアノを持ち込んで自分自身に聞かせるようにじっくり弾いています。よく聞くと窓辺の鳥の声がかすかに入っています。

 ところで調べたらリヒテルオデッサ生まれのウクライナ人でした。

第9位 バッハ作曲 ゴールドベルグ変奏曲

 グレングールドの名盤が2枚あります。彼のデビュー盤と亡くなる直前の演奏です。演奏の素晴らしさもありますが、一人のピアニストの人生の縮図がここにあると思うと胸が熱くなります。音楽だけで評価すべきだと思われる方もおられると思いますが、知ってしまった以上、その思いを遮断するのは不可能です。

 

 他にも好きな曲はいっぱいあります。しかし、きりが無いのでこの辺でやめときます。